<事件の概要>
平成14年3月中旬と下旬、宇都宮市在住21歳無職の男が、同市内の公園において猫1匹ずつを脚蹴りにして殺害、さらには同年5月中旬には、同市の他の公園で、近くの女性の飼い猫をひもで首を絞めて殺して公園内の動物管理棟のドアの取っ手につるしたほか、同日にまた別の公園で同様に野良猫を殺して川沿いの柵につるすなどした事件。
飼い猫については刑法の器物損壊罪、野良猫については動物愛護法違反の罪が問われた。
判決:懲役1年、執行猶予3年(動物愛護法違反)
(求刑:1年6ヶ月)
平成15年6月23日 宇都宮地方裁判所
<裁判要旨>
「猫に対する独占欲や虐待する快感というゆがんだ考えから犯行に及んだ」もので、「捕まえた猫をひもで逃げられないようにしたうえ、首を吊り下げ虐殺した」としたうえで、「世間に注目してもらいたい自己顕示欲から猫の死体を木や欄干に放置し、地域住民に不気味感を与えた」と指摘した。
しかし一方で、「被告は反省し、背景になった未熟な人格が一定程度改善されている。」とも述べ、執行猶予付の判決を言い渡した。
弁護側は「事件当時、被告は心神耗弱状態であった」と主張したが、「被告は未熟な人格障害に基づくものにすぎず、善悪を認識している。ひもを事前に用意しており、時には罪悪感も抱いている」としてその主張を退けた。
器物損壊罪については、「虐殺された4匹の猫の内の1匹は、首輪をつけておらず飼猫とは断定できないこと」や、被告が「餌付けされた野良猫」と認識していたことから、「客観的には飼猫だが、被告が他人の所有物と認識していたことには疑問が残る。」として、その責任を認定しなかった。
<その他>
被告は、その他、同年5月16日午後8時ごろ、同市内の会社役員宅(59)の玄関先につながれていた飼い犬(ゴールデンレトリバー、雄12歳)を連れ出し、約20メートル離れた県職員住宅南棟の裏庭で、折れたゴルフクラブで顔や頭を6、7回殴りつけた。犬は翌朝、頭から血を流して倒れているところを役員の妻(59)が発見したが、20日朝に脳挫傷で死んだ。
被告は、この事件で器物損壊の疑いで逮捕・検挙されたが、被害者の会社役員が告訴を取り上げたため、いったん釈放されていた。
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<管理人補足>
器物損壊罪は、その量刑が3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処すると定められており、特に懲役刑については動物愛護法の1年以下よりも重くなっています。
また、所有者の存在する財産権への侵害行為となるわけですから、その被害者については、権利義務の主体となることができる人又は法人ということになります。
つまり、被害者は法律上単なる「物」としての犬猫ではないのです。
このため、このような場合においては、捜査機関は「器物損壊罪」として捜査をする例が多くなっています。
今回の例でも、まず犬に対する器物損壊として検挙されたわけですが、そもそも器物損壊罪が親告罪であるために、告訴権者が告訴を取り下げたような場合、その罪が問えない場合ことになってしまいます。
しかしながら、この様な場合には、動物愛護法による責任は別に問うべきものの筈です。
一つの行為が複数の犯罪行為となる場合、本来は最も重い刑で処断すべきものではありますが、その最も重い刑罰の責任が問えなくなるといって、刑事上の責任がなくなるというものでもないからです。
しかし、今回のケースでは新たに発覚した猫の事件のみで起訴をしております。
このようなことは、言わば、「たかが動物では中々警察は動かない」と言われることの現われかとも思ってしまうところです。
*判決文全文を探しております。
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