(猫の引取り記録の一部非公開取り消し請求/行政訴訟)
平成15年(行ウ)第2号(H15.10.28 那覇地方裁判所)
公文書である猫の引取り記録の一部非公開決定取消請求事件
事件の概要と判決文の抜粋






事件番号  :平成15年(行ウ)第2号
事件名   :公文書一部非公開決定取消請求事件
裁判年月日 :H15.10.28
裁判所名  :那覇地方裁判所
部     :民事第2部



事案の概要



 原告の飼い猫が,平成12年5月8日の朝,行方不明となったが,同月17日に行政に問い合わせたところ,同月8日午前8時ころ,浦添市ab丁目c−d eマンションの駐車場において,原告の飼い猫と思われる猫が,何者かによって箱に入れられて行政側に引き渡され,既に処分済みであると知らされた。
 このため、原告は、行政側に猫を引き渡した人物を確認することを目的として、被告に対し,平成14年7月24日,浦添市情報公開条例に基づき,公文書である「浦添市ab丁目c−d eマンション駐車場内で,平成12年5月8日月曜日の午前8時に引き取った猫の記録」の公開を求めた。
 被告は当該文書の公開をしたが、その内、個人に関する情報であって,その記載された住所と氏名により,又は,個人の氏と業務上の地位が結合することにより,特定の個人を識別することができる一部情報については非公開とする決定を行ったために、この決定の取消を求めた事案である。



判決主文

1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。



裁判所の判断

 個人の氏,住所の地番の記載は,まさしく特定の個人を識別することができる情報であり,上記業務責任者の氏の印影も同日の当該業務の責任者であるという業務上の地位と相まって特定の個人を識別することができる情報であるから,これらの情報は,いずれも条例7条2号に該当し,同号但書に規定された例外的に非公開となし得ない情報に該当しない限り,非公開情報となる。

(浦添市情報公開条例7条2号)
個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。
法令又は条例の規定により,何人でも閲覧することができる情報
人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報
(省略)
公にすることを目的として作成し,又は取得した情報
当該個人が公務員(地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員及び国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員の氏名,職及び当該職務遂行の内容に係る部分


(ア)につき
本件非公開部分に係る情報を「何人でも閲覧することができる情報」として規定した法令又は条例は存在しない

(イ)につき
本件情報の公開は原告の私益を守る手段になる可能性はあるものの,それを超えた公益的な目的があるとは認めがたい。

(エ)につき
本件記録は,被告から不要犬・猫等の引き取りや路上に放置された犬猫等の死体を処理する業務を受託している民間の事業者が委託契約に基づき日々の業務の成果を被告に報告するために作成し,提出したものであり,同号但書エに規定された情報に該当するとは認められない。

(オ)につき
本件記録に記載された業務を担当しているのは被告からの受託業者である民間の事業者であって,同条項所定の公務員であるとは認められないから,前記各情報は同号但書オに規定された情報に該当しない。





<管理人補足>


判決文の他の部分において、

「原告の飼い猫が,平成12年5月8日の朝,行方不明となったが,同月17日に行政に問い合わせたところ,同月8日午前8時ころ,浦添市ab丁目c−d eマンションの駐車場において,原告の飼い猫と思われる猫が,何者かによって箱に入れられて行政側に引き渡され,既に処分済みであると知らされた。」

「同日朝,原告宅の近くで奇声を聞いており,その際に何者かによって原告の飼い猫が捕獲されたと考えられる。原告は,その何者かについて思い当たる人物がおり,本件非公開部分に記載された情報の公開を受けることによって,原告の飼い猫と思われる猫を行政側に引き渡した人物の氏名,住所等を確認したい。」

「原告は平成12年5月8日に原告の飼い猫が行方不明になったことに関し不信を抱いており,本件非公開部分に記載された情報の公開を受けることによって,原告の飼い猫を,浦添市から委託契約に基づき不要猫の引き取り等の業務を行っていた業者に引渡した人物の氏名,住所等を確認した上,同人に対し損害賠償請求をすることを考えていることが認められる。」

との原告の情報公開要求の動機が述べられています。


この部分から想像されるのは、猫による近隣同志のトラブルの存在です。
(事実と異なりましたら、ご容赦ください。以下の解説はあくまでも一般論です。)

猫のトラブルが根底にあって、トラブルの元になっている飼い猫を捕獲、保健所へ持ち込んだり、又は他の場所に遺棄をしたりといった行為を行う人間が後を絶たない状況があります。
確かに、他人の飼い猫によって何らかの被害を被っている方にとっては、とても我慢が出来ないようなときもあるであろうことは、理解も出来なくはありません。
しかし、だからといって、他人の所有している財物(犬猫も入ります)をそれと知りながら勝手に処分するような行為は、決して許されるものではありません。
法治国家であるわけですから、このような自力救済のようなことを認めていては、秩序が保てなくなってしまいます。
これは近代国家においては、大原則と言えることです。
もし、私人間での解決が出来ないのであれば、「法律」にのっとった形で(例えば損害賠償請求の裁判を起こす等で)解決を図るべきということは、極めて当然のことなのです。

従いまして、「他人の飼い猫を捕獲して、保健所に持ち込む又は遺棄する」といった行為は、れっきとした犯罪となります。
この件に関しての直接の判例は存在はしておりませんが、大審院の明治44年(れ)第9号事件に見られる有名な動物傷害に関する判例もあり、その要旨から考えてまず間違いないところです。
また、刑事責任のみならず民事上においても、その損害賠償や慰謝料等の責任を追求される可能性も充分有り得ます。

昨今は、このようなことを業務として行う便利屋のような業者もいるように聞いておりますが、こういった傾向は非常に憂慮されます。


なお、この件に関する情報公開条例における個人情報の開示は、この浦添市に係わらず、どこの自治体においてもほとんど無理かと思います。
また、刑事責任の追及についても、官憲を動かすこと、それ自体が非常に難しいとも言われており、中々有効な手段がとれないことも多いようです。
そして犯人が特定できない状況においては、さらに捜査機関を動かすことが困難とも言われる訳ですが、そもそも刑事告発の制度は、捜査機関でもない一般人に被疑者の特定までをも要求をしているものではありません。(捜査は警察や検察の仕事なのです)
このことから、「被疑者不詳」で刑事告訴等(出来れば告訴が良いのですが受理させることすら難しい実情がありますので、被害届けでも・・・)を検討されても良いかと思います。
どうせ無理だから・・・と最初から諦めていては前には進みません。
なお、管理人が聞いた例においては、同一住宅地において複数の猫が行方不明になった例もありますが、このような場合は被害者がそれぞれ行動を起こすことが非常に重要です。
数が力となって、捜査機関を動かすことにつながるのです。
また、「刑事手続きをした」という事実は、そのような行為を行った人間に対して、間違いなく相当なプレッシャーを与えることにもなってくるはずです。
愛護関係者に協力を求めることも有効でしょう。(告訴と違い告発については、被害者に限らず犯罪が行われたと思料するものは誰でも行うことが出来るからです)
そして、これによって、もし犯人が捜査機関に特定されたら、今度はその人物に対して民事での責任も追及できることになりますね。
ただ、仮に猫の外飼いによるトラブルがあった場合は、判決において過失相殺がなされることは、まず間違いないところではあります。

しかし、こういったお話を聞くにつけ、やはりトラブルを起こさないこと、そういった飼育を心掛けることこそが、より重要というように感じてしまいます。


*この解説は、主として一般論を述べております。
 本件判例における事実とは異なる部分があるかもしれませんので、その点をお含み置きください。




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作成管理:ねこのおじちゃん


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