事件番号:平成14年(ろ)第14号
事件名:動物の愛護と管理に関する法律違反被告事件
伊那簡易裁判所 平成15年3月13日 判決
<判決主文>
被告人を罰金15万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
<事件の概要>
長野県上伊那郡所在の「C乗馬牧場」の経営者が,同所に設置された厩舎において同人が所有・管理する愛護動物である馬2頭(クォーターホース1頭,シェトランドポニー1頭)について,平成13年3月9日ころから同年4月11日までの間,上記馬2頭に対し,死馬2頭が放置されていた上に馬糞の清掃もなされていない不衛生な環境の下,十分な給餌をせずに栄養障害状態に陥らせた。
<判例要旨>
動物の愛護及び管理に関する法律27条2項に規定する「虐待」とは,愛護動物の飼育者としての監護を著しく怠る行為を指すものであり,その代表的な行為として「みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる行為」が例示されているものと解される。
したがって,必ずしも愛護動物が「衰弱」していなければならないものではなく,著しく不衛生な場所で飼育し,給餌又は給水を十分与えず愛護動物を不健康な状態に陥らせるといった行為も,上記「虐待」に該当するものと言うべきである。
本件は,乗馬牧場を経営していた被告人が,そこで飼育していた馬2頭に対し,極めて不衛生な状況下で,十分な給餌をせず栄養障害状態に陥らせたという事案であり,生命ある動物を苦しめた被告人の行為は非難されなければならない。
特に,上記2頭の馬は,5年以上もの間,被告人の下で飼育されてきており,十分な餌を与えられなくなっても,被告人を信頼して従順に空腹に耐えていたであろう様子を想像すると,まことに不憫である。
これらの点を考慮すると,被告人の刑事責任を軽視することはできない。
(求刑:罰金30万円)
<補足説明>
当方ではこの判例が出る前に、「ペットを飼育すること〜その法律的な責任〜」の記事の中で、この愛護法の虐待の定義について、その解釈の問題点を指摘しておりました。
以下、記事の抜粋です。
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改正前の動物保護管理法第13条においては、
第13条 保護動物を虐待し、又は遺棄した者は、3万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項において「保護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類又は鳥類に属するもの
と定められておりましたが、遺棄行為はともかく、虐待行為についての明確な基準が定められてはいませんでした。
例えば、飼料及び水の給与を行うように努める義務を怠れば、ペットの健康状態は深刻なものとなりますが、これをもって虐待行為にあたるのかどうかは、なお解釈にゆだねられることとなるのです。
このような事実があったとして、果たして罪に問うことができるのか、公判が維持できるのか・・・この点がクリアーにならない限り警察・検察の腰が重くなるのは自明の理であり、このことが旧法たる動物保護管理法の適用がほんの僅かしかなされなかった理由の一つではないかと思っております。
これを受けて、改正動物愛護管理法では、
第二十七条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行った者は、三十万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に揚げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に揚げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
と定められました。
新法により、給餌給水をやめる行為が即ち虐待行為にあたると明確に示された事は一定の進歩です。
なお、この部分については給餌給水をやめることのみを虐待とする趣旨ではなく、飼い主等による不適切飼育による、言わば消極的虐待行為を例示的にあげているものと解釈できるものと思われます。
それは、第27条では、1項として殺し傷つける行為を規定しており、これはいわば直接的な行為の結果としての虐待と言えるものですが、2項としては「給餌給水をやめる」という消極的な虐待行為を規定しているものと考えるのが自然であり、「衰弱させる等の虐待を行った者」の等という文言は「みだりに〜」以下に掛かるものと考えるべきだからです。
ただし、給餌又は給水をやめたとしても衰弱するに至らなかった場合はどうなのか、どの程度を持って衰弱と判断できるのか、など明確さを欠く部分は、なお存在をしています。
このように、どの範囲までが虐待と認定されるのかは、依然不明確な点は否めないところでもあり、次回5年後の見直しにおいては、さらなる明確な規定が望まれるところです。
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このような法令の不明確な点は、判例においてその判断が示されます。
この点につきましては、今回の判例が虐待行為について、「必ずしも衰弱している必要はなく、著しく不衛生な場所で飼育し、給餌又は給水を十分与えず愛護動物を不健康な状態に陥らせるといった行為も、虐待に該当すると言うべきである」との判断を示して、非常に注目されます。
それは、下級審の判例ではありますが、今後の裁判には間違いなく影響を与えるものだからです。
ただし、極めて常識的な判断とは言えるかと思います。
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