(業務上過失傷害事件/刑事)
昭和33年(う)第2497号
業務上過失傷害被告事件
S34.12.17 東京高等裁判所





S34.12.17 東京高裁 昭和33う2497 業務上過失傷害被告事件


事件番号  :昭和33う2497
事件名   :業務上過失傷害被告事件
裁判年月日 :S34.12.17
裁判所名  :東京高裁
部     :第八刑事部
結果    :破棄差戻・確定

判示事項  :
刑法第二一一条にいわゆる業務に従事するものと認められた一事例


裁判要旨  :
犬の飼育訓練に経験を有する者として雇われ、その任務が犬の給食、運動、手入等、巨大な犬の飼育訓練であり、しかも、街頭において運動させる際は特別の注意を払わなければ通行人等に危害を加える虞なしとしないような場合には、刑法第二一一条にいわゆる業務に従事するものと認められる。


裁判集登載巻号・頁:12-10-1026K


         主    文


原判決を破棄する。
本件を東京地方裁判所に差し戻す。


         理    由


 本件控訴の趣意は東京地方検察庁検事正代理検事岡崎格作成名義の控訴趣意書に記載されたとおりであるからここにこれを引用し、これに対し次のように判断する。

 検察官の控訴趣意第一点について。

 <要旨>よつて按ずるに、

刑法第二百十一条にいわゆる業務とは、原判決の説示するとおり、人が社会生活上の地位</要旨>に基き継続して行う事務であつて、その性質上、人の生命身体に対する危険を伴うものを指すと解すべきところ、

原審において適法な証拠調を経た原審証人A、同Bの各証言並びに被告人及び原審相被告人Cの原審公廷における各供述等を総合すれば、被告人は昭和三十一年一月十四日職業安定所の紹介により特に犬の飼育訓練に経験を有する者としてC方に雇われ、同日より同月二十八日頃までは主として犬の給食を担当し、同月二十九日頃より本件の発生した同年二月四日に至るまでは、右給食の外、一日一回約二時間C方の飼育犬グレートデン種二頭に引綱をつけてこれを運動させ、その他犬の手入れをしていたものであつて、被告人のC家における主たる任務が右の如き犬の飼育訓練であつたことを認めることができ、しかも、本件の場合の如くグレートデン種のような巨大犬を飼育訓練するについては、屋敷内においてはこれを繋留し、街頭において運動させる際は、一回に一頭宛運動させるとか、犬に口輪をはめるとか、その他特別の注意を払わなければ、通行人等に危害を加える虞なしとしないのであり、そのためにこそ、被告人が専門的にこれらの事務に従事する飼育訓練係としてC家に雇われたものであること叙上のとおりであるから、このような犬の飼育訓練係としての被告人の地位は、獣医師の免許の有無にかかわらず、まさしく叙上の意味における業務に該当すること明白である。

しかるに原判決は、被告人がC家に雇われた時獣医師の免許を有することを秘匿していたこと、その給与が安く獣医師としての待遇を得ていなかつたこと等を理由として、被告人は犬の世話をその一部とする雑役的労務に従事していたものと認定し、かかる労務は本質的に女中、下僕のなすことと選ぶところはなく、前記法条の業務とはいい得ないと説示して、本件を通常の過失致傷罪とみなし、親告罪につき告訴のけん欠することを理由として、公訴棄却を言い渡したのである。

してみれば、原判決は証拠の判断を誤つて被告人の地位に関する事実認定上の過誤を犯し、ひいて法令の解釈適用を誤り、これを前提として、不法に公訴を棄却したものというの外はない。論旨はすでにこの点について理由があるから、爾余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。

 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百九十八条に則り原判決を破棄し、本件を東京地方裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり判決する。


 (裁判長判事 岩田誠 判事 八田卯一郎 判事 司波実)





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作成管理:ねこのおじちゃん


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