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東京地方裁判所 平成6年3月31日判決
<事件の概要>
管理組合Xには、管理規約に基づく細則の中に、小鳥以外の動物の飼育を禁止する定めが存在していた。
しかし、これに違反して犬猫を飼育する者がいたことから、Xは総会で当時犬猫を飼育していた組合員により構成されるペットクラブを設立し、ペットクラブの自主管理の下で、当時飼育中の犬猫一代限りにつき飼育を認める決議をした。
ところが数年後に、Yが犬を飼育するようになったため、XはYに対し飼育をやめるよう求めたが、Yが飼育を続けたため、犬の飼育の禁止と不法行為による弁護士費用等の損害賠償を求めて提訴した。
<裁判所の判断>
Xの請求を認め、Yに対し、
犬の飼育禁止と弁護士費用の一部を不法行為と相当因果関係に立つ損害と認めて、その支払いを命じた。
この事件では、
@犬猫の飼育を禁止する規約は有効か
A犬を飼育する行為はXに対する不法行為といえるか、
が争点となった
@について
管理規約に基づく細則では、組合員等が小鳥及び魚類以外の動物を飼育することを禁止しているが、これに違反するものが存在し、鳴声及び排泄物の問題や、犬が子供にじゃれついて怯えさせる等の理由により、本件規定を組合員等に遵守させる現実的な妥協策として、当時犬猫を飼育している者で構成するペットクラブを設立させて飼育方法につき自主管理させるとともに、新規参入を認めず、現に飼育し、Xに登録した犬猫一代に限ってのみ飼育を認めることを決議し、時の経過に伴い、犬猫を飼育する者がいなくなり、ペットクラブが自然消滅するようにした。
この総会の決議に伴い、現に犬猫を飼育している者の参加による公聴会でペットクラブが結成され、役員を選出し、会員名簿をXの理事長に提出した。
Xは管理組合ニュースによりペットクラブを発表し、ペットクラブ会員の住所、氏名、電話番号、犬猫の種類、匹数を全組合員に公表するとともに、「公表した人以外に犬猫を飼育している人がいたら、管理事務所に届出て下さい。お互いによい生活環境をつくるため努力しましょう」との呼び掛けをした。
管理組合ニュースで公表されたペットクラブの会員は20名であったが、その後犬を飼育していた者1名の追加加入が認められた。
その後、ペットクラブへの新規加入を認めた例はなく、ペットクラブは毎年各会員が犬猫の写真を添付して会員名簿をXの理事会に提出し、犬猫の同一性に疑義を生じないようにしている。
区分所有法は、区分所有者及び占有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない旨規定し(6条1項、3項)、建物又はその敷地若しくは付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができると規定して(30条1項)、同法3条所定の区分所有者の団体が定める規約に法的な効力を賦与し、かつ「区分所有者の共同の利益に反する行為」として、具体的にどのような事項を盛込むかについて団体の自治に委ねる態度をとっている。
Xは、規約に基づく細則の本件規定により犬猫の飼育を禁止しているが、Xの構成員の多数が今なお本件規定の遵守を組合員等に求めており、ペットクラブの自然消滅を期しているから、厳格の管理の下にペットクラブ発足時の犬猫一代限りの飼育のみを承認するものとしているXの構成員の多数の意見に反し、それ以外の犬猫を飼育する行為は、区分所有法6条の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するものとして、同法57条1項により差止請求の対象となる。
Yは、ペットクラブの会員による犬猫の飼育との対比において、細則の本件規定の効力を否定するが、ペットクラブを設立させることとした総会決議の趣旨は既に述べたとおりであり、ペットクラブの会員でも、新たな犬猫を飼育することは禁止されているのであるから、本件効力が及ぶことは明らかである。
また、ペットクラブ設立後のXの運用において決議の趣旨に反する措置があったものと認めることはできない。
したがって、Yの犬の飼育に対し、本件規定の遵守を求め、飼育をやめるよう要求することは、共同生活の秩序維持を図るXの自治的活動としてなんら不合理ではない。
Aについて
組合員からXに、Yが犬を飼っており、ドアのところまで犬が来て吠えているので迷惑を受けているとの苦情があったため、Xの理事がYに電話で飼育をやめるように申し入れたのに対し、Yは、なるべく早いうちに犬を貰ってくれる人を探す旨の書面を差し入れたものの、期限を過ぎても犬の飼育を続けたので、Xは、Y宅に犬の処分を促す書面を入れ、理事会にYの出席を求めて犬を処分するように話した。
しかし、その後もYは犬の飼育を続け、Xからの電話や文書の受領を拒否するようになったので、Xは再度犬の飼育をやめるように勧告する書面をYらの郵便受けに入れ、総会でYに対し提訴することを決議し、その後もさらにYと話合いの機会を持つことを図ったが、Yはこれに応じなかった。
以上の事実関係においては、本件規定に違反し、犬を飼育し続けているYの行為は、Xをして共同生活の秩序維持のために金銭負担を伴う措置をとることを余儀なくさせるものであって、Xに対する不法行為となる。
Yは本件規定に違反して犬の飼育を続け、Xの再三の飼育禁止の申し入れに応じなかったため、Xは弁護士に依頼して本訴を提起せざるを得なかったが、本件事案の難易、訴えの提起に至る経過、Yの応訴の状況、その他諸般の事情を斟酌すると、弁護士費用のうちの一部がYの不法行為と相当因果関係に立つ損害である。
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